嚢胞性線維症検査を始めて10年
嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)という病気を知っていますか?日本では極めて稀(出生60万人に1人)な遺伝性難病です。食塩(NaCl)の成分であるClー(クロライドイオン)の細胞における通り道(チャネルと呼びます)が遺伝的にうまく働かなくなり、塩辛い汗が出ることが特徴の病気です。Clーの動きが悪くなると、気道や消化管のサラサラの分泌液がネトネトになるために痰の出が悪くなり、肺の重症の感染症が起きやすくなります。また消化液を分泌する膵臓の菅が詰まって線維化が進むと、油の消化ができなくなり脂肪便や消化障害により発育が悪くなります。
診断には汗を採取してClーの濃度が高い(塩辛い)ことを確認すること(汗試験)が必要です。また膵臓の外分泌障害の診断には、便の中の膵エラスターゼという消化酵素の濃度が低くなることを確認(便中膵エラスターゼ試験)します。
この2つの検査ができるのは日本でみよし市民病院だけです。私たちがこの無償のサービスを始めて10年が経過しました。
これまでに全国から53人の患者さんが、みよし市民病院に来院されたり、私たちが新幹線や車で入院された病院を訪問して汗試験を行いました。汗試験の結果、このうち22名が嚢胞性線維症と診断されました。便中膵エラスターゼ試験は北海道から沖縄まで、140名の検査依頼があり、36名の患者さんが膵外分泌不全と診断されました。私たちの誇りは検査した日の内に全国の主治医に検査結果を報告するようにしていることです。少しでも難病患者さんの役に立てればと願っています。